栄養士コラムVol10

平成23年9月19日

Dave Baseball Academy

栄養レター 

子供の将来のために タバコへの細心の注意を

 喫煙者の保護者の方へは耳の痛い話ですが、お読みいただければ幸いです。

平成15年に施行された健康増進法により受動喫煙防止も含めて禁煙に関連する事柄が法律で規制されました。それにより、レストランや乗り物など公共施設での禁煙や分煙が進んでいます。

さらに、平成17年には「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(WHO Framework Convention on Tobacco Control)の条約が平成16年6月ニューヨーク(国連)で採択され、多数国家条約として本条約が発行されました。もちろん日本もその一員となります。この条約により、日本国内では健康増進法よりも急激に禁煙活動を推進されるようになり、現在は、1箱700円になろうとしているのもこの条約の影響です。例えば、台湾では、妊婦さんがたばこを吸った場合、警察に捕まります。また、シンガポールやマレーシアでは、公共施設での喫煙に対する罰則はとても厳しいものです。タイでは、映画やドラマの喫煙シーンにはモザイクがかかります。

 つまり、世界的にもタバコは廃止への方向へ進んでいるのです。では、なぜそこまで禁煙をしなければならないのでしょうか。

すべては、子供を守ることが重要課題なのです。

1.    喫煙が、麻薬などの薬物依存への入り口となるため。

以前は、喫煙を未成年者が始める場合は、ある意味では、はっきりと悪い子だとわかるような子供たちが行っていました。従って、その中にも秩序的な社会が存在していました。薬物に手をだすのも、特異的な人だけでした。しかし、今はインターネットの普及もあり、簡単に薬物を普通の子が手にすることができるのです。

2.    成長段階での喫煙は、大人の依存性よりも強く急激に進み、体への影響は想像以上の悪影響をもたらす。タバコ煙も同様です。

 子供へのタバコの煙は、幼児期は、受動喫煙率が高ければ乳幼児突然症候群での死亡、そうでなくても、小さい時から中耳炎にかかりやすく、気管支炎や肺炎になりやすい原因となります。また、小さい時からの受動喫煙率が高ければ、親よりも子供が大きくなれません。脳細胞にも影響し、学習能力低下の子供の家庭内受動喫煙率の高さが報告されています。

注意していただきたいのは、家庭内での分煙方法です。

ニコチンの曝露:体内に入ったニコチンは一部コチニンという尿や唾液に分泌される物質に変化します。コチニンは食べ物や飲料水など天然には存在しないもので、ニコチンが体内に入ってこないとできないものです。血中のニコチンの半減期は約2~3時間ですが、コチニンの場合は約17時間ですから、どれだけニコチンが体内に入ったかの指標になります。非喫煙者の尿中のコチニン濃度の平均値を1とします。

 

つまり、非喫煙を1としたとき、同じ部屋でタバコを吸う人がいる家庭で育った子どものニコチン濃度は約15倍ですから、15倍の受動喫煙の影響があることになります。台所換気扇の下で喫煙する場合も3.2倍の受動喫煙の影響があることになります。ましてや同じ車の中でタバコを吸う行為はもっと多くの受動喫煙の影響があるのです。 

その他、タバコの煙の子供への影響が初期段階で分かるのが歯肉が黒くなるメラニン色素沈着です。下の写真は、5歳の歯肉の状況です。色素沈着している子供の母親は喫煙者で、健康な歯ぐきの子供の保護者は、非喫煙者です。山形市の開業歯科医師が調べた結果では、色素沈着した子供の70%は保護者が喫煙しており、色素沈着していない子供では、保護者の喫煙率は35%だったそうです。

たばこの害から子供のを守る http://www1.ocn.ne.jp/~yukinari/tabako.html

 

 以上のように、目で見える形でタバコの煙は子供たちへ影響を与えます。1分タバコの煙を吸っても、日頃吸っていない子供の毛細血管への酸素運搬が低下し、手の温度があっという間に低下していくのです。つまり、子供の成長期において、タバコの煙は、子供にとって一酸化炭素をはじめとした公害の煙なのです。体内に入ることで、血液内の必要な栄養や酸素運搬に悪影響を及ぼし、結果的に体と脳の成長をストップもしくは、成長を抑制することへつながります。そして、何よりも思春期のタバコへ走る子供たちの多くは、すでに吸う前からタバコの煙に抵抗はありません。スポーツは、好きであってもかなりのストレスを抱えます。その逃げ先が思春期に入りタバコに走らないことを願うばかりです。

 日本のスポーツの世界での喫煙率は、世界的にみてもとても高いです。これまで勝つことができたかもしれません。しかし、世界に通じる選手で、選手生命の長い選手の多くは、非喫煙者が増えています。たばこの煙は、放射能を毎日浴びていることと同じとも言われてきました。

福島第一原発の放射線は、強い時で400ミリシーベルト程度 

毎日20本、1年間の喫煙では、70240ミリシーベルトの被曝に相当する

このタバコの害は、喫煙者への影響ですが、たばこからでてくる煙の方が、有害物質は多くなります。大人も子供も、今は放射能汚染された環境下で生きています。排除できる有害物質はできるだけ排除することが、将来プロを目指す子供を守る親としての義務なのではないでしょうか。最後に、日本小児科学会では、子供の前でタバコを吸うことは、児童虐待の一つであると認定しました。        

 理栄養士 徳野 裕子